田園風景をアートに
地域資産である田園風景。田畑から連なる水系に農道。田んぼを区画している畔や畝。そこには、地主さんの想いや実際に田んぼを耕作する農家の熱意、各関係機関の意向すべてが重なって田園風景を生み出しています。この地域の資産である田園で仕事をするようになり20数年、絶えず思って来たことは、任された区画を年間を通じて綺麗に管理できるかどうか。結局それができない限り、地域農業を守ることなんてできないし、ましてや発展などあり得ないと思うからです。
ここ最近の僕の心の中はどうかと言えば、以前と変わらず、田んぼを綺麗に管理することに徹し、更に、田園風景をアートにしたいって思うようになってきました。そう、どこの角度から見ても、絵ハガキになるくらいの情景を造ってみたいのです。綺麗な空間。心地いい空間。田んぼ道をウォーキングされている方が、いいなこの田園風景って思ってもらえる空間を造りだしたいのです。
美味しいってお客様に思ってもらえる農作物って、栽培された周辺環境がまず土台だと僕は思います。綺麗な環境で育てられた農作物に美味しくないものはまずありません。写真の風景を作り出す為に、収穫後の秋耕しから始まり1年かかります。春先からの育苗、田植え、肥培と水管理、そして、畔草の管理。雑草との戦いに勝ち抜いてこの1枚の写真になるのです。
毎年、スタッフみんなが心一つにして、夏場の草刈業務を徹してくれます。どこの田んぼよりも美しくって言う僕の想いも伝えています。みんなの熱意があってこの田園空間が出来たのです。2019年、刈り取った早生品種、取引先のお米屋さんからも、検査を受けた玄米すべて等級は1等ですと報告を受けました。検査官の方も今年の気候状況から見て、驚いておられたともコメントを頂きました。
要因は何かと考えると、父の米作りの真似ができたからだと思います。まずはそれが一番の要因。早生品種に関しては、父が出した穂の長さと同じになったってことなのです。長すぎても、短くても駄目なのです。父の長さと同じでなければならないのです。だから等級が1等になるのです。そして、スタッフみんなの気持ちの入った草刈でしょう。
2019年秋、台風が通過後、いよいよ、後半戦が始まります。晩生品種に限っては、父の穂の長さを真似ただけでは駄目なのです。栽培方法にアレンジが必要です。一部、品種の見直しを試験的にも取り入れました。そして、管理業務の改善の一環として、除草剤散布に特化したホバーボートの試走と、1ha分の圃場は、ドローンも飛ばしてもらって来季からの栽培管理をイメージ。確かな手応えを得て、刈り取りを待っています。そうそう、蜜苗もやったぞ。
僕の農園の機械設備と労力を考え、そこに見合う栽培手法の実証をした今期。試したいことをすべてやった。そこで試した結果、出せた稲穂がこの文章上の写真。8月中旬の台風の影響を若干受けて、籾が傷めつけられた部分もありますが、観て、手の平で感じて納得の稲穂。晩生に限っては父の出した穂より長くした。新品種はと言えば、プックリ感が違う。まだ、実証段階なので作りこなすまでには数年かかりますが、面積を追いたくなる品種。生まれ持っているのDNAが違うってことも手の平で感じとれました。今期得られる数値と父が僕に残してくれた言葉をベースに技術を積み上げ来季、面積を追うことに決めています。
では、面積を追う為には何が必要なのか。今、自分が思うことを表現する為には何が必要か。問いかけると見えるものがあるから、そこに向けて、ただ道を進むだけです。来季は登りたい山がある。登りきって山頂でどんな情景を見れるのか、また、どんな男に成長しているんだろうと思うと、楽しみになって来ます。自分の思い描くジェントルマンになれているかどうか。これが僕の挑戦なのです。
稲穂が生み出す金色の世界を、一回りも二回りも大きくなった自分になって歩いてみたい。