ブルーベリー栽培を伝える使命
田んぼを耕し、米を作りながら地域の農地を守る。僕の中で一番の使命。そして、自分の代で始めた
ブルーベリー栽培。この栽培技術を伝えることも大切な使命なのです。毎年、秋が終わる頃に弟子達が
ブルーベリー畑にやって来ます。そこでは、普段の授業では伝えられないブルーベリーの剪定作業の
実践講座が行われるのです。
ブルーベリーの栽培技術書やWEBを通じて、ブルーベリーの剪定のポイントは紹介されています。
しかしながら、実際にブルーベリーを栽培し剪定シーズンに直面しハサミを入れる時には
思うように枝が切れない。技術書を読むだけではマネできないのがブルーベリーの剪定です。
そこは1対1でプロセスから学ばせないと剪定の理解なんて絶対に無理だと僕は思います。
だから、どんなに遠方の弟子でも畑に来てもらって僕と一緒に剪定作業をするのです。
弟子の大半は、現状を変えたい。やがて訪れる定年後の人生設計の為に農業を選ぶ。
動機はそんな所が多いですね。自然の中に身を投じて仕事をする。そりゃ気分はいいものです。
けれども、その裏が分かっていない。自然災害の恐ろしさを。地震や台風の大災害ばかりでなく
日常のちょっとした気候の変化で被害を被ることを知らないのです。こればかりは経験しないと身に沁みない。
開花シーズン、冷たい風や雨で花が痛み結実不良になることも経験しないと分からない。
物事に挑戦する時は、成功する自分しか想像しませんから。
だから僕は、このブルーベリーの剪定講座の時に、弟子と対面しながら、とにかく話す。
僕が農業経営から経験したことすべてを。失敗も含めて。
もちろん、ブルーベリーの剪定技術の話が一番ですが。
ブルーベリーの栽培学校を行って初めて入門をしてくれたのが写真の弟子。人生を迷って、ブルーベリーと出会って
それでも迷って僕の元で技術を学んでくれた。ようやく大きな光が彼に差し込んだのが昨年。意欲に満ち溢れている。
電話での彼の返答を聞けばすぐにわかる。さすがは九州男児。彼はめげなかった。そこが素晴らしい!
適地適作。現在、その言葉の意味を理解し農業経営をしてくれています。
品目は違うが、僕が受け継いだ稲作の大規模化にヒントを得て、60馬力超のトラクターで畑を耕すまでになって
くれたのです。農業で収益を上げる一つのパターンを得たのです。
そこは、彼が遠方から僕の農園に足を運び、我が家の農業経営を観たから。着眼する目を持っていたことが勝因。
僕も彼と何を話したかは忘れています。けれども、僕がどうやって農業で収益をあげているかビジネスモデルを
伝えたことは覚えています。
人を育てることは大変なこと。半端な気持ちじゃできません。人生を賭けて入門してくれたのだからなおさらです。
気持ちと気持ちが繋がらないと授業は成り立たないし、繋がる工夫をしなければ指導者は失格です。
同じ目線で、対相手。まずは弟子の気持ちを察すること、そして、待つこと。
もっと大切なのは僕自身の器の大きさ。自分も進化しない限り人はついてこないし、引き付けられない。
ブルーベリー栽培の伝承者として心に刻んでいることです。