親父が始めた水稲の大規模経営。26歳で親父に弟子入り入門した頃は9haを耕作。母も交えての家族経営で米作りを行っていたのですが、年を追うごとに受託面積も増えるのです。高齢化に伴い自作の田畑が管理できないから田んぼを作ってもらえないかって言う依頼です。
地主さんと耕作者。信頼関係の中での頼みごと。頼ってもらえると思うと父も僕も嬉しい訳で分かりましたと承諾。2006年以降は20haを超え、その後も面積が増加。2014年には30ha規模へ。

受託面積20haを超えた辺りからは、田植時期や管理作業が始まる6月は労力が足りません。ご近所さんやシルバー人材会社に助けて頂き労働力の確保に努めます。と同時に受託面積が増えるとトラクターなどの農業機械はフル稼働しなくては田植シーズンは乗り切れず家族経営+軽作業のアルバイトさんでは限界点が見え始めたのです。
父も僕も答えは一つ。受託の依頼があればお受けする。断れば経営は止まる。これが心の中。意地とプライドを持ってして立ち向かっていた。

助けてくれたのは、よっちゃん。田植シーズンから7月の管理作業あたりまで。その後は本業へ。そのパターンで5年あまり。土木現場を知り尽くしていた彼。人の3倍は働いてくれた。トルク感が違う。すごいと思った。そして、僕が知らない現場術をたくさん教えてくれた。精度に速さ。そして、完成品の美しさ。モノ作りチャンピオンとでも表現すればいいのでしょうか。それが、よっちゃん。また、ひょうきんなんだよな。話がツボに入る。楽しかったな現場仕事。

トラクターのオペレーションも上手かった。僕、教えた記憶がない。写真は代かき作業なのですが右の畦畔ブロック際の綺麗な仕上がりは今みてもビックリ。旋回時の進入角も上手く決めています。よっちゃんが僕に言ってくれた言葉で忘れられないのは、仕事がもらえて幸せって言ってくれたこと。なんかジ~ンと来た。この言葉には。
トラクター仕事が終わると必ず窓を拭いてくれている。朝、汚れのふき取りが甘いと拭き直してくれている。握力が人並み以上だからウエスがキンキンに絞れる。だからよっさんの窓拭きは水滴が窓に付着しないから透明感が違うのです。トラクターを大切に乗ってくれた。親父も喜んでいたトラクターを大切にしてくれたこと。僕や父を助けてくれた恩人です。

よっちゃん、絶えず言っていた。気やなって。気とは気持ちのこと。ほんと農作業なんてそのとおり。気持ちを持ってして立ち向かうのかどうなのかで決まるのです。そりゃ原理原則からなる理論も大切です。けれども、最後になれば気持ち。それしかない。
田んぼの美しさは四隅で決まる。母が絶えず僕に言っていたこと。麦跡の水田は溝切後の土が田面に盛り上がり圃場を荒らします。特に四隅は。代かき時に水を入れて作業機で引くのですが、相当な量の時は人力でしか対応できず。水を回しながら鍬をつかい整地。気持ちのなにものでもないこの整地仕事。

30haを耕作するにあたり機械装置も一新した時。長年愛用のトラクターGLシリーズはMZへ。コンバインはAR70からER698へ。精度が1段上へ向上した。そして、面積が楽にこなせるようになった。ひと昔前では考えられないこと。技術革新を感じとった年。10年前では考えられな面積が最新の設備を導入すればできてしまう手応えを感じ取る訳です。家族経営での大規模・稲作づくりの労力体系。機械装置の更新手法。そして、よっちゃんから学んだ現場術の数々。仕事が目の前にあるありがたみ。僕の30代後半の出来事。気持ちと共に。
