水稲55ha超+ブルーベリー500本あまりをチーム吾一農園5名で生産管理を行っている。チームクルーの年間休日は100日+有給休暇。キャプテンの僕はプレイング・マネージャー、絶えず圃場を駆け回っている。現場から見て生産管理する余力は十分。だから耕作する機械装置と労力のバランスは非常にいいと感じる。作業適期もズレない。嬉しいことにクルー達のライフ・ワークバランスは高評価を得ている。

この大面積を少数精鋭で耕作し、地域の平均値と同等の収穫高と良質な農作物の生産に特化し経営を行っている。何が難しいかと言うと、大面積だからと言って収穫高も質も平均値を落とせないこと。なぜなら、収支のベースだからだ。近年、極端な天候により量と質の平均値を出すのが難しい。春先の寒波。梅雨時期の大雨と長雨。夏の熱波。どれも農作物を栽培する上で悪条件が重なる。一番困るのは開花時期の悪天候。寒波も熱波も両方。それに伴う病害虫の発生。ひと昔前では考えられないことが現場では起こっている。

育苗、耕運、田植、稲刈、乾燥調整。大面積であろうが自社で行うテキスタイルを貫いている。一貫性だから責任が自社に係る。この責任を背負うことはチームクルーの成長に繋がるし、技術向上にも役立つ。そう思うから僕はこのスタイルを変えない。一貫性を貫ける理由の一つには、僕が農業を始めた30年前と比べ機械装置の性能が格段に向上しているからだ。最新は最良だ。効率が上がることが分かっているから最新鋭の機械投資を惜しまない。

だかしかし、面積が増えると連動して圃場間の区割りをしている畦畔(畦道)が増える。付随し農業用水路や農道に面した法面もだ。この管理に時間を要する。草刈をし、除草剤の力も借りて草との戦いが4月上旬から11月上旬にかけて行われる。草に負けちゃ駄目だ必ず勝つこと。負ければ害虫の住家が作られ農作物に害がおよぶ。
草刈りを始めると田畑には必ず手の入らない所が現れる。そこは刈払機での草刈。この刈払機の作業も大面積であろうがスタイルは変わらない。細部までやり尽くすことが僕達・チーム吾一農園。でも、夏場は堪える。強い日差しを受けながらの草刈はね。僕も逃げたくなるこの暑さ。自分が嫌なことはチームクルーにさせられない。これが僕の方針。でも、省力はありだが省略は駄目だ。省力化のきっかけとなったのは、各エリア何が行われているかチームクルー全員が瞬時に把握できる作業管理システムを持ってからだ。

上の管理シートはチームクルーのカトちゃんが作ってくれた。彼はエクセルの魔術師だ。以前は僕がアナログ管理をしていた。そりゃ、アナログだから草刈なんかは重複する所も出て来る。非効率と言うこと。非効率以上にいけないのがチームクルーに草刈の全容が見えていないこと。何度も同じ所の草刈になるとモチベーションも上がらず。。。悪循環そのものだった。このカトちゃんオリジナルの管理シートのお陰でスマホから瞬時に管理シートに進捗を記載。リアルタイム化が計られ、どこのエリアのどの部分が終了し、目標設定した日までに残りがどれくらいあるかがチームクルーに情報が共有された。重複作業もなくなり好循環の中で草刈業務が行えるようになった。作業ロスを抑えられチーム全員の労務改善に繋がった魔法の管理シートの完成である。毎年、アップデートし進化している所もまたいいね。

プレイング・マネージャーの僕からすると管理シートを土台にクボタKsasを同時に操ると天下無敵になる。アナログ地図を開くことなく、2画面のパソコン上で作業の進捗状況が手に取るように分かる。左画面・Ksasからは圃場地図と農作業機械がどこの圃場で仕事をしているのかが分かり、右画面・管理シートからはリアルタイムな進捗情報が受け取れる。進捗伝達がとにかく早くて正確。だから明日の作業工程をその日に的確にチームクルーに伝えられることが可能になった。その日に明日の備えができてしまう。このアドバンテージが大きい。そして、短期、中期、長期目線の計画が数値を基に描くことができる。まるで一目均衡表だ。この一目は根拠ある数値から、未来を具体的に確立高くイメージさせてくれるから胸が熱くなる。

明日が予測できる魔法の管理システムがあるからと言っても、現場は観ないといけない。悪天候と向かい合う現場で何が起きているかを肌で感じ目に焼き付けることが必要だ。そして、生産する農作物の生育ステージを理解できているかも重要だ。農作物が今、何を求めているかだ。必要な時に必要なものを的確に与える。これが農作物の生産に量と質の平均値化を持たらしてくれる。

例えば、先ほどの「必要な時に必要なものを与える」この作業適期の着眼から米の栽培において絶対に外せない工程が追肥。田植からの日柄計算で幼穂形成期を仮定し、葉色と幼穂を観て施肥設計に沿って追肥を実行する。実行後、管理シートに落とし込み収穫期を迎え収穫高の計算となる。平均値の収穫高は出たかどうかだ。チームクルーの誰がどのエリアを担当したかが管理シートで分かるから収穫高を考察する上で追肥が上手くできていたのかどうかが分かる。また、僕はクルー達の作業フォームを常にチェックしている。指導したフォームで散布できているかが重要だ。フォームが綺麗なヤツは何をやらせても上手く行く。そして、このフォームが作業時間中に持続できるかが問題だ。持続できると言うことは効率かつ的確な作業ができていると言うこと。そして何より体の負担が軽減される。持続できる為には、体の柔軟性、持久力、それをスピードとパワーで包み込むことだ。そのたたき台として、朝の朝礼でラジオ体操を行っている。先のことが動機づけになると思うからだ。ここまでやらなきゃ100点満点のフォームは作れない。

そして、作業適期の着眼からもう一つ。大面積での農作物の生産において不可欠であるものが農薬。使用時期と回数を守れば農薬は悪じゃない。農作物の生育ステージにおいて今何を散布してあげれば農作物の健康状態を守ってあげられるかを観ることが大切。そうすれば農産物の質は保たれる。それから、農薬の種類を学ぶこと。いったいこの成分は何に効くのかを知ることだ。農薬は使用技術と知識で善になる。

大面積を臆することなく瞬時に農薬を散布できるシステムを持つことも必要だ。準備と移動と休憩を含めて一人で4時間あまりで7haの農薬散布を確実にこなしてくれるドローンT-10。それも、農薬にまみれることなくだ。2人体制で背負い動噴で防除を行っていた時に比べ天と地。それだけ活気的な産業機械だと思う。農業は空からだ。
ドローンによる高精度な農薬散布を行っても、害虫や雑草に勝てないこともある。外来種の雑草ヒレタゴボウがその一例だ。生育が非常に強い。次から次へとアット言う間に圃場内に広がった。農薬の使用時期を守らなくてはいけないから絶やすことができない。大面積でも全筆、稲刈前には圃場の中に入りチームクルーみんなでヒレタゴボウを抜き取る。毎日少しづつ。チームクルーの強い意志からなる地味地な積み上げはヒレタゴボウに負けない。最後には全圃場を抜き取り仕上げる。そして、金色の世界を創りあげる。

大面積での農作物の生産を収穫高と高品質に的を絞り生産管理するには、最新で最良の機械装置に投資すること。そして、気持ちが一つに繋がったチームが必要だ。垣根にあるのはリアルタイムで誰が何処で何をしたかが分かる作業管理システムを構築すること。そして、栽培する品目の生態からなる生育状況の把握と病害虫を軽減させる為の農薬の知識が必要だ。もっと大切なことは、それらを現場で観る力がチームクルーに備わっていなければならない。そして何かあればデジタルとリアルの融合を持って瞬時に実行作業に移せる術を持つこと。その後は、再度、デジタルに落とし、現物と数値から現状を読み取り次年度の策を講じる。この積み上げでしかない。

2025年、チームクルーに思い入れのある番号を背負わせた。背番号に嘘つく仕事をするなって言う僕からのメッセージ。ミディアムグレー×ネイビーのCollege色でまとめたチームTシャツ。左袖には「ゴイチ」さんのロゴも配置。着用時には、みんな燃え滾ってくれることを期待する。結局の所、最新の設備を武装し管理ツールを構築したところで使うのはチーム吾一農園の面々。人間力を向上させなければ道具は使いこなせない。それから、栽培する農作物と向き合い仕事を通じて人間形成の場としてキャリアを積んで欲しいと僕は願う。農作物の生産は人そのものが現れるからだ。僕だってキャプテンとしてチームを牽引するには魅せなきゃいけない。魅了させるには、前に進んで大きなものを背負わなきゃオーラが出ない。言葉だけじゃ駄目だ。僕そのものの生き様を魅せなきゃ。指導しながら思う。チームの面々を育てているのだが、その対価として、僕もみんなに育ててもらっている。不思議な感覚だ。
追伸
チームみんなで飯を食べに行くと良く食べてくれる。喜んでくれるから腹いっぱい食えっていつも言ってやる。そうするとビックリするくらい食べてくれる。満腹後の慢心の笑顔がとってもいい。僕のビタミン剤なんだ。みんなの笑顔。
